ホウレンソウのF1新品種『オシリス』の種子を生産者向けに発売 販売ページはこちら
秋まき用ホウレンソウをさらに栽培しやすく安定した低温伸長性、べと病※1R(レース)-1~10※2抵抗性※3を備え、作業性、収量性にも優れる
サカタのタネは、ホウレンソウのF1新品種『オシリス』の種子を発売します。『オシリス』は、気温に左右されにくい安定した低温伸長性が最大の特長です。夏の長期化や、集中豪雨などといった天候不順により、近年難しくなってきている秋まき年内出荷に適しています。また、べと病のR(レース)-1~10の抵抗性を付与させています。湿害にも比較的強いため葉が黄化しにくく、土質を選ばず栽培できます。草姿は立性※4で茎折れが少ないことから作業性に優れ、強健で収量性が高く、極濃緑の高品質の青果を収穫できるので、ホウレンソウ栽培が初めての生産者にもおすすめです。
現在、ホウレンソウは周年にわたり広く栽培されていますが、本来、冷涼な気候を好むため秋まき栽培が最も適しています。しかし、2013年10月11日には東京都で統計開始以来最も遅い真夏日を、同年11月13日には群馬県で1978年以降最も早い真冬日を記録するなど、近年は夏が長期化し、秋は短く、すぐに冬が訪れるといった気象状況が続いています。そのため、ホウレンソウの秋まき栽培は、低温のため生育が遅れ気味になり、通常の作型である年内出荷がしにくくなっているという問題が生じてきています。あわせて、露地栽培においては台風や低気圧などにより集中豪雨に見舞われることで、葉が黄化して品質が低下したり、ひどい場合には青果を出荷できなくなるケースも増えてきていることから、耐湿性にも優れるホウレンソウが求められています。
また、ホウレンソウの重大病害であるべと病の病原菌は、「レース分化」(抵抗性遺伝子を打破する進化)が比較的早い糸状菌(カビ)で、国内ではR(レース)-8が最新レースとして公的に報告されています(2014年3月現在)。秋、春まきで発生しやすく、大きな減収要因にもなることから、同病害が問題になっている産地では、抵抗性品種の導入や薬剤による防除が必須となっています。
このような気候変動の影響と、べと病のレース分化に対応するために開発したのが『オシリス』です。特に開発に力を注いだのは、気温に左右されにくい安定した低温伸長性の実現です。これにより、秋まきでの計画的な生産出荷が可能になります。また、湿害による葉の黄化が出にくいので、水田の裏作などでも栽培できます。べと病のレース分化が激しいアメリカでも研究を行い、国内未発生のR-10を含むR-1~10の抵抗性を付与させています。
草姿は立性のため葉の絡みが少なく、茎折れしにくいので、作業性にも優れます。葉は光沢のある極濃緑色、平滑な剣葉で、葉先はややとがり、はっきりと欠刻(切れ込み)が入ります。このように『オシリス』は、生育強健で作業性と収量性に優れ、高品質な青果を収穫できることから、ホウレンソウ栽培が初めての生産者にもおすすめの品種です。
『オシリス』の播種の最適期は、寒地・寒冷地の9月中旬~10月上旬、温暖地・暖地の10月中旬~12月中旬です。早まきすると株が徒長しやすくなるので、播種時期を守ることが重要です。同品種を試作された生産者からは「寒い時期でも収量がとれる」「葉の色が濃くて品質がよい」などといった評価をいただいています。
なお、品種名の『オシリス』は、古代エジプト神話に登場する「植物の神」の名前から付けています。ホウレンソウの中でも特に主流の秋まき栽培において、同品種が確固たる地位を築いていってほしいとの期待を込めて命名したものです。
今後、環境変化によってもたらされる気象変動により、さまざまな農作物の栽培が難しさを増すなか、サカタのタネでは長年蓄積してきた膨大な植物遺伝資源、育種研究開発力を最大限に活用し、これからも産地のニーズに対応した品種を開発し、青果物の安定的な供給に寄与していきます。
※1 べと病:
糸状菌(カビ)の一種のべと病菌(Peronospora farinose)により葉に灰緑色~黄色の境界不明瞭な病斑ができ、これが葉全体に広がり淡黄色となり葉裏面に灰紫色のカビが生える植物病害。特にホウレンソウの秋および春まき栽培で被害が大きい。これは、べと病菌が平均気温15℃前後で曇天や雨が続くと発生しやすいことによる。
※2 R(レース):
病原菌の形態には差異はないが、病原性が異なる菌系統のこと。数種の標準抵抗性品種を抵抗性を侵す/侵さないという抵抗性/罹病性反応によりレースが決定される。それまで発病が認められない抵抗性品種を侵す病原系統が発生すると、それが新レースとなる。ホウレンソウのべと病は、国内ではR-3~8までの発生が公的に報告されている。
※3 抵抗性・耐病性:
当社では、発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくい安定したものを「抵抗性」と呼び、影響を受けやすいがその程度が軽く、収穫するうえではほとんど問題にならない性質を「耐病性」と呼んでいる。「抵抗性」としているものでも、条件やレ-ス分化などにより発病する恐れがある。
※4 立性(たちせい):
分枝や葉の着生角度が鈍角の形質を開張性というのに対し、鋭角のものを立性という。一般に立性の品種は、受光態勢がよく、より多くの葉に光を受けることができる。また、開張性に比べて立性は、株幅を狭くできるため、単位面積当たりの株数を増やすことができる。これらのことから、立性の品種の育成は多くの作物で目標とされる。
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